公衆衛生から食文化概論まで~多岐に渡る調理師の受験科目を知っておこう
調理師を目指すなら必修科目の目的と理解が必須?!
調理師免許とは、食や調理に関する知識や技術を持つプロであることを証明する国家資格です。その取得方法としては、過去記事「▼調理師免許取得のプロセス」でも紹介しているように
・調理師養成施設を卒業する
・調理実務経験を積んだうえで調理師試験に合格する
の2つの方法があり、前者の厚生労働省から指定を受けた調理師養成施設(調理師専門学校や短期大学など)であれば、
調理師試験を受けることなく、調理師免許を取得することができます。
というのも、調理師専門学校などでは料理の基本から専門的な技術までを体系的に学び、食材の扱い方や調理法、衛生管理などの調理師として必要なスキルや知識を習得するために、調理師試験を受けずに取得することができるのです。
しかしながら、調理師試験の試験科目は、
・公衆衛生学
・食品学
・栄養学
・食品衛生学
・調理理論
・食文化概論
の6科目があり、調理師専門学校では厚生労働省が定める調理師養成施設指導ガイドラインに基づいた教育内容として、「食品と栄養の特性」や「食品の安全と衛生」、「調理理論と食文化概論」などを学ぶことになり、卒業時にはこれらの
必修科目の本質的な理解が必須といえます。
そして、調理師とは
食の安全を守る重要な役割を果たすこと
であり、食中毒などが起きないような衛生管理を徹底しなければなりませんし、バランスの取れた食事を提供することが求められます。また、料理は身近な科学実験とも言えるように、科学的な理解や技術的な手法、料理の理論的な枠組みを理解する必要があるのです。
将来は一流レストランのシェフになりたい!といった場合でも、調理師免許の取得を考えているのならば、調理における高い技術力だけではなく、食品の取り扱いや調理場の清潔さなどさまざまな管理能力やスキルが求められるでしょう。
調理理論以外にも衛生学や食文化を学ぶ必要がある理由とは
さて、料理は科学実験とお伝えしましたが、調理をするうえではあまり意識することなく化学反応や物理作用を駆使しているため、調理理論では料理中に起こる
発酵や酸化などの「化学反応」
温度や圧力変化といった「物理作用」
といった側面も学びます。
たとえば、ホワイトソースを作るときには、焦げて色が悪くなってしまったり、ダマができてしまったりすることもありますが、科学の観点から考えることで失敗を防ぐことができます。
ホワイトソースのルーを作るにはフライパンでバターと小麦粉を混ぜていきますが、色が悪くならないためには火加減と小麦粉を入れるタイミング、ダマニならないようにするためにはルーと牛乳の温度がポイントとなります。
ちょっとしたコツではありますが、小麦粉の主成分であるデンプンの働きを知り、どのような化学変化が起こるかなどを理解することがとても重要となります。このように調理ではさまざまな化学反応が数多くありますので、調理理論という授業ではレシピには詳しく説明されていない食材ごとの異なる性質や適切な調理法や加熱時間などを理解します。
また、最も重要なのが食品衛生学の知識。食品衛生学では、
食品の製造、保存、販売における衛生基準や法規制、衛生管理の重要性など
調理師としての押さえておくべき基本的な知識について学び、
食中毒を引き起こす微生物や毒素、物理的な危険などの予防法や対策について理解します。
自家製マフィンを販売し、食中毒を引き起こしてしまった事件があるように、正しい知識を得ていないことにより重篤な健康被害への可能性を高めてしまう恐れがありますので、そのようなことが起きないように正しい知識をしっかりと身に着けることが求められます。
なお、調理師は食文化の担い手でもあるため、
食の歴史や伝統料理、郷土料理
を学びます。食文化は、国や地域によって異なる伝統や風土、歴史や習慣を反映しているため、これらを学ぶことで料理のレパートリーが増え、創造性が豊かになり、新しいレシピ開発にもつながることでしょう。
▼どんなことを学ぶの?!技術から理論まで独立開業も見据えた授業内容あれこれ
卒業後に実感?!知識と理解の深さが卒業後の活躍につながる
このように調理師専門学校では、料理の基本から応用まで幅広い技術を習得し、実習や研修を通じて、実際の調理現場で必要なスキルを身につけることができ、卒業後は自信を持って料理を提供する立場で活躍することができます。
レストランやホテルなどの飲食業界でシェフとして活躍する場合には、専門学校で培った高度な技術や創造力を活かして、料理やメニューの企画・開発を行い、お客様に満足していただける料理を提供できるでしょう。
また、医療施設や介護施設、学校や企業の食堂などの施設でも、調理師として活躍することができます。高齢化が進む日本では、高齢者や健康上の理由で摂取制限が必要な人に対する介護食の調理は重要な役割となっていますし、学校や企業の食堂などでは学生や従業員などの健康や栄養に配慮する役割を果たします。
なお、飲食店や施設に就職しなくとも、独立して料理店や飲食店を開業したり、フリーランスとして自由なスタイルで活動することもできるでしょう。
最近では、動画配信サービスを通じて、多くの人々に料理の楽しさや技術を伝える料理関連のコンテンツを制作する料理人も増えていますし、自身の経験や知識を活かして、ケータリングサービスや料理教室の運営、フードコンサルタントとして活動したりと、さまざまなキャリアパスや活動の可能性が広がっています。
調理師免許は学校を通わずに取得することも可能ですが、調理師専門学校に通うことで専門的な知識と技術の習得、実習やインターンシップで調理現場の経験を積むことができます。また、調理師専門学校での人との出会いは、将来のキャリアや業界での成功につながりますので、人生においての貴重な財産となることでしょう。