
菓子職人・パティシエに必要なスキルは「技術とセンス」
調理師と並び、調理関連の代表的な職種のひとつである菓子職人。
正確には、男性をパティシエ、女性はパティシエールと呼びますが、近年スイーツ市場の拡大と共に、パティシエを目指す人が増えていることはご想像のとおり。最近では、コンビニエンスストアで売られているスイーツも、本格的な洋菓子店顔負けの味と見た目を実現しており、より一層スイーツが身近になったことも拡大の背景にあるようです。現在、日本国内における
パティシエ(男女含め)の人口は25~30万人程度
と推測されていますが、市場規模の拡大と共にその人口はますます増加する傾向にあり、市場の活性化と競争が激しくなることで、より洗練された美味しいスイーツが誕生しやすい環境にあると言っても過言ではありません。ただし、当然競争が激化することで、美味しい商品を安く提供することはもちろん、見た目や話題性といった
他の商品との差別化・オリジナリティを打ち出す
ことは必須であり、そこには専門学校で学ぶ基礎的な技術はもちろんのこと、スイーツならではの
表現力や独創性といった感覚的な部分
も求められることになりますので、やはり座学や技術だけでなく、スイーツ職人ならではの「センス」を磨いていくことも重要になります。もちろん調理におけるセンスは、何も菓子職人・パティシエだけに求められるものではなく、調理師においても研ぎ澄まされた味覚や美的センスは必要となりますが、それはある程度
経験によって培われる部分
もあり、調理師専門学校を卒業するだけで身につくものではありません。 素材の活かし方から食材の彩り、食器のチョイスなども含めたトータル的なコーディネートによってそのセンスが引き立ちますが、一方のパティシエにおいては料理のようなトータルコーディネートではなく、
お菓子1つで目でも舌でも楽しませる必要
がありますので、ケーキにせよ、クッキーにせよ、チョコレートであっても、その限られた大きさのなかで「どれだけ独創性の高いセンスを表現できるか?」ということが重要になってきます。言うなれば、調理センス以上に難易度が高いという点は、念頭に置いておくべきかもしれません。
そこで今回は、そんな市場規模が拡大するスイーツ業界で活躍するパティシエにフォーカスし、パティシエとして活躍するために必要なスキル「センス」の磨き方や独創性の高め方についてご紹介していきます。もちろん、今回はパティシエのお話が中心となりますが、当然和菓子職人にも同様のことが言えますので、和菓子・洋菓子で区別するわけではなく、
同じ菓子職人として必要なスキルとマインド
という点について切り込んでいきます。
パティシエやパティシエールを目指す学生さんにとって、独創性やセンスは学校では身につきにくい感性的な部分になってきますので、菓子職人としての感性を高めるなら、日ごろからデザインセンスを磨くことを意識した生活を送るよう心がけておくと良いでしょう。このページでは、そんなパティシエとしての感性を高める具体的な方法をいくつかご紹介していきます。
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素材への直感?味覚バランス?菓子職人のセンスとは?
「センスを磨く」・・・
よく耳にする言葉ではありますが、実際にセンスを磨くってどういうこと?、センスを磨くには何をすればいいの?、と聞かれて、正確に答えられる人はあまり多くないかもしれません。センスと聞くと「ファッションセンス」を思い浮かべる人が多く、
服のセンスが良い・悪い
などと言われますが、この服のセンスとは端的に言えばオシャレの象徴だということ。服のチョイスはもちろん、インナー・アウターとの組み合わせや上下のコーディネートの良さなどの総称として、ファッションセンスという言葉を用いる傾向にあります。一方で、パティシエなど菓子職人における
センスの良さとはどのような点を指すの?
という疑問が生じます。
ファッションにおけるセンスが
・アウター
・インナー
・パンツ
・シューズ
といったように、それぞれの構成要素とその組み合わせによってセンスの良し悪しが決まるのと同じように、パティシエにおいてもその作る洋菓子や和菓子に対して
・見た目
・素材
・味
・トレンド
などが主な構成要素となることは言うまでもありません。
冒頭でもお伝えしたように、スイーツは目と舌で楽しむと言われるように、まずは見た目の華やかさであったり、美味しそう・食べてみたい!と思わせるビジュアルの必要性は料理以上に重要です。近年では、
インスタグラムなどのSNSでシェアされる
というのが、見た目に対するひとつのバロメータとなりつつありますが、やはりスイーツを好む女性がトキメいて、まわりの友だちに自慢したくなるような見た目のスイーツは、やはり「美的センスの高いお菓子」と言えるでしょう。
そして、素材についても料理と同様、良い素材を使うほど味の安定感が高まりますが、良い素材ほど原価が高くなり、それが販売価格に直結してしまうため、単に良い素材ばかりを使えば良いというものではありません。価格面などは、実際に社会に出てからの課題となってきますが、
当然「売れることもセンスのひとつ」
と言えますので、この概念を度外視してはなりません。
そして最後に味の部分です。
見映えがよく、リーズナブルな価格で提供できたとしても、美味しくなければお客様の欲求を満たすことができないことは言うまでもありません。見た目ばかりを意識して、本来重視すべき味の部分をおろそかにしては、ファッションセンスでいうところの
「服はカッコいいのに靴がダサい」
という感覚と同じようなもの。
つまり、パティシエにおけるセンスの良し悪しは、
・ビジュアル的な視点
・素材選びの技量・経験
・人々の心を掴む味覚
などを上手に組み合わせることができるかが、重要なポイントのひとつになるのです。 こうした感覚は、もちろん経験によって培われてくる側面もありますが、感性は個人差も大きい部分ではありますので、日ごろから物事の洞察力を磨き、豊かな表現力を身に付けられるよう、何事にもその意識を持つことが大切です。
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ケーキやスイーツは美的センス重視?!調理センスを磨く方法
パティシエにおけるセンスの重要性や、そのセンスがどのようなことを指しているのかをある程度理解できたところではありますが、では実際に「どうすれば調理センスを磨くことができるの?」という点について見ていきましょう。
まず前提にあるのは
センスは経験によって磨かれる
という側面もあり、やはり専門学校での経験はもちろん、社会に出てから様々な環境で、色々なことを経験することによって、自身の技量はもちろん、味覚や美的センスが向上していきます。もちろん、経験を多く積んだからといって必ずしも培われるとは限りませんが、ここで重要なポイントとなるのが
色々な人の考えや志向を吸収できる柔軟性
を持つことが大切で、せっかくたくさんの経験を積んだとしても、それを吸収できなければ、自身の技量向上だけでなく、パティシエとしてのセンス向上にも結び付かなくなります。一般的に「センス」は感性であり、個人個人のよって捉え方が異なる部分ではありますので、絶対的な正解はありません。
ただし、パティシエとしてのセンスとなりますと
・見た目が美しいといった美的センス
・季節感を感じられる素材やデザイン
・甘さや酸味などのバランスや豊富な食感
・トレンドを意識しつつも独自性が高い
・和と洋を組み合わせるなど異なる食文化の融合
など、その構成要素も多岐に渡ってきますので、より一層正解がないなかで、
いかに万人にウケて、評価されるか!
という点を考慮しなければなりません。
つまり、ある程度のこだわりは必要かもしれませんが、こだわりが強すぎて自己満足になってしまうと、いくら見た目の美的センスに溢れていたとしても、万人ウケせずに話題にもならない、つまり「売れない商品」になってしまうのです。パティシエを目指す学生のうちであれば、売れる・売れないは重要な要素ではありませんが、逆に学生のうちから社会に出ることを前提に
売れる商品に仕上げるためのセンスを磨く
という点も考慮してくと、引く手あまたのパティシエになれるかもしれません。
上記でも何点か挙げたとおり、パティシエ・菓子職人におけるセンスにおいては
・美的センスの向上
日常に美を取り入れることを意識し、SNSなどを活用して他の人の創造的なインスピレーションを集めたり、なんとなく感覚的に感じるものを言語化したり、といったトレーニングを意識しましょう。例えば、カッコいいとか可愛いと感じる理由を自分なりに文字化してみるといった訓練です。
・季節感や素材への興味関心を高める
スイーツや和菓子作りに季節は欠かせません。四季折々の景色や体で感じる四季をスイーツとして表現するためにも、当然素材の知識を深めることも重要ですし、四季の変化をどのように表現するかを、調理に関わらずアート全般を対象に見たり、真似たりして自分のものにしていきましょう。
・色彩への意識の高め方
スイーツにおいて見た目は非常に重要な要素となりますが、意外と色使いに関しては学ぶ機会に乏しいため、色彩の学びを取り入れることもセンス向上につながります。色相環における補色・反対色といった最低限の知識だけでも押さえてくことで、スイーツ作りにもきっと役立ちます。
これらのように、パティシエとして必要なセンスやその磨き方については、ここでは紹介しきれないほど多岐に渡りますが、他人の感性や創造力を吸収するという点も、とても重要な要素となりますので、柔軟かつ謙虚な姿勢で、
より良いセンスを吸収して自分のものにしていく
ということをいつまでも忘れないようにしましょう。
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